私が若い頃、接客の基本としてまず教えられた
のは「三つ指をついてお迎えすること」でした。
お客様が来られたら、背筋を伸ばして正座し、
両手を床につけて頭を下げる。
その所作ひとつで「あなたを大切にしています」
という気持ちを表す。
それが“誠意ある接客”とされていた時代です。
ですが、現代ではどうでしょうか。
正座して出迎えられたら「なんだか堅苦しい」
「かえって居心地が悪い」と感じるお客様も
いらっしゃるかもしれません。
特に、家族葬や小規模な葬儀が主流になった
今では、アットホームで、緊張感のない接客の
方が求められるようになってきました。
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■ 変わる「礼儀」 変わらない「心」
接客の「形」は、時代と共に変わります。
スーツにネクタイではなく、柔らかな服装で
接した方が安心感を持たれることもあります。
でも――
変わってはいけないものが、ひとつだけあります。
それは、「相手を大切に思う心」です。
どれだけ言葉遣いが丁寧でも、どれだけ形式に
沿っていても、そこに「心」がなければ、お客様は
すぐに見抜きます。
逆に、少し言葉が砕けていたとしても、そこに
真心があれば、人の心は動くのです。
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■ 昔の常識、今の非常識?
三つ指をついて頭を下げることは、確かに美しい
所作でした。
でも、それを知らない世代からすれば、ただの
「堅い儀式」に見えてしまうかもしれません。
お迎えの仕方も、言葉の選び方も、時代によって
“正解”は変わっていきます。
だからこそ、私たちは“形”にこだわりすぎるの
ではなく、今のお客様にとって、何が心地よく、
何が信頼につながるのかを常に考える必要が
あります。
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■ 結びに
昔の常識は、時として今の非常識になります。
ですが、「人を思いやる心」だけは、時代を
超えて変わりません。
私たちが目指すのは、形式的な接客ではなく、
人と人とのつながりを感じられる接客です。
お客様が「ここで良かった」と心から思える
ように、これからも“心”でお迎えしていきたいと
思います。

感謝。