昔から日本各地で、火葬場のことを「お山」と
呼ぶ地域があります。
「なぜ“お山”と呼ぶのか?」――その理由を
調べると、いくつかの背景が見えてきます。
第一に、かつて火葬場は人里離れた山の中に
造られることが多かったという歴史があります。
衛生や火の安全のため、集落から離れた山の
斜面や高台に設けられ、自然と「お山へ行く」
と表現されるようになりました。
第二に、“山”という言葉には日本人にとって
特別な響きがあります。
古くから山は神仏が宿る場所、魂が帰る聖地と
考えられてきました。
そのため、故人を見送る火葬場を「お山」と
呼ぶことには、畏敬の念や感謝の思いが
込められているのです。
そしてもう一つ大切なのは、直接的な言葉を
避ける“やさしい表現”としての役割です。
「火葬場」という現実的な言葉よりも、
「お山へ行く」と伝えることで、少しでも
悲しみを和らげようとした先人たちの心遣いが
感じられます。
――“お山”という言葉には、歴史と文化、
そして人の優しさが重なっています。
言葉の奥にある思いを知ると、普段何気なく
使っている表現が、とても深い意味を持って
いることに気づかされます。

感謝。