葬儀の準備で大切にされるものの一つが
「死装束(しにしょうぞく)」です。
白い着物に三角の頭巾、脚絆(きゃはん)、
手甲などを整える姿には、古くからの日本人の
死生観が込められています。そして、そこに
添えられる「六文銭」にも深い意味があるの
です。
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1. 死装束とは何か
死装束は、故人があの世へと旅立つための
「旅支度」です。
白い着物は「清浄・無垢」を象徴し、欲や
しがらみを脱ぎ捨て、清らかな姿で次の
世界へ向かうことを表しています。三角頭巾は
魔除けや冠の意味を持ち、修行僧の姿に近い
装いを整えることで「悟りへの旅」を
意識させています。
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2. 六文銭の由来
死装束と並んで大切にされてきたのが
「六文銭(ろくもんせん)」です。
六文銭には二つの解釈があります。
1. 三途の川の渡し賃
人は死後、三途の川を渡るとされます。
その渡し守に渡すための「通行料」として
六文銭を持たせたという説です。
2. 六道を超えるための象徴
仏教には「地獄・餓鬼・畜生・修羅・
人間・天」の六つの世界=六道があり、
人は輪廻転生を繰り返すとされます。
六文銭は、その六つの関所を越えて迷いの
世界から解放されるための象徴ともいわれて
います。
いずれにしても、六文銭は「無事にあの世へ
行けますように」という祈りの形でした。
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3. 現代の死装束と六文銭
現在の葬儀では、火葬場の規定により
硬貨などの金属を棺に入れることができ
ません。
そのため実物の銭ではなく、紙や布に六文銭を
印刷したものを代わりに納めるのが一般的です。
また、白い死装束の代わりに、生前に愛用した
洋服や着物を着せることも増えており、
「その人らしさ」を尊重する形も広がって
います。
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まとめ
死装束と六文銭は、形式的なものではなく、
「故人を安心して旅立たせたい」という家族の
想いが込められた大切な習慣です。
清らかな装いで、六道の迷いを超えて安らかな
世界へ――。そこには昔も今も変わらぬ祈りが
生き続けています。

感謝。