前職で大手冠婚葬祭互助会で会員様の募集を
していました。
個人宅を訪問し、新規のご案内やアフター
フォローを行う仕事です。
決して楽ではありませんでしたが、人と人との
つながりを感じられる、やりがいのある
仕事でした。
当時、たくさんの素晴らしい同僚たちに恵まれ
ました。
その中に、50代の女性で、成績も良く、
おとなしくて優しく、誰からも好かれている
方がいました。
ある日、同僚たちと少しだけ公園で休んで
いると、彼女が小さな声で、「時間がないよ、
早く仕事しなさいよ」とやさしく叱ってくれ
ました。
その時は、まだ勤務が始まったばかりで、
時間はたっぷりあるのに…と思いました。
でも彼女は、その日も、次の日も、会うたびに
笑顔で言っていました。
「時間がないから、頑張ろうね」と。
そんなある日、彼女が仕事中に体調を崩して
早退したと聞きました。
「頑張り過ぎたんだろうな」と思っていました
が、それから彼女は会社に姿を見せなくなり
ました。
上司から詳しい説明もなく、月日が流れていき
ました。
ある日、仕事中に訃報が入りました。
彼女が亡くなったという知らせでした。
お通夜で再会した彼女は、まるで眠っている
ような穏やかな表情で、声をかければ目を
開けてくれそうなほど安らかでした。
あとで聞いたところによると、彼女は自分の
病気を知りながら、最後まで仕事を続け、静かに
闘っていたそうです。
だから、いつもあの優しい声で言って
いたのです。
「時間がないから、頑張りましょうね」と。
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「時間がないから、頑張ろうね」
彼女は私の中で、今も伝説のトップセールスマン
です。
成績だけでなく、人の心を動かす力を持って
いた方。
たくさんのことを教えてくれました。
心から、ありがとうございました。
また会いましょう。


感謝。