かつて従業員が2,000人以上いる冠婚葬祭の
大手互助会に勤めていました。
営業部に所属し、会員様の募集活動を担当して
いました。
雨の日も風の日も、一軒一軒ご自宅を訪問し、
新規の会員様の開拓やアフターフォローに励む
毎日。
決して楽な仕事ではありませんでしたが、
その中に確かな“やりがい”を感じていました。
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ある日、社内の研修制度で「葬祭部」で3日間の
研修を受けることになりました。
当時の私は、正直なところ「葬儀」という
仕事にあまり良いイメージを持っていません
でした。
しかし、その3日間が、私の人生を大きく
変えるきっかけになりました。
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研修初日、病院へのお迎えから始まり、
打ち合わせ、通夜、葬儀の設営。
一連の流れを間近で見学・体験しました。
葬儀が終わり、閉式後の「おわかれの儀」。
スタッフ2人が、お棺に向かって深々と一礼し、
ふたを静かに開け、もう一度、故人様に一礼
しました。
その動きはぴたりと揃い、言葉もいらないほどの
厳かさと誠実さがありました。
私はその光景に、胸が熱くなりました。
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そして、ご遺族様がお花を手向けられる時間。
お一人おひとりが「ありがとう」「お疲れさま」
と声をかけながら、静かに涙を流しておられ
ました。
その姿を見ているうちに、気づけば私の目からも
涙が溢れていました。
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最後のご出棺。
霊柩車のドアが静かに閉められる瞬間、
そこにいた全てのスタッフが一斉に合掌、礼拝を
されました。
その一瞬の空気。
その深い祈り。
全身に鳥肌が立ち、私は心の中でこう思いました。
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「この仕事がしたい。
多くの人の“最後の瞬間”に寄り添い、
心から感謝される仕事をしたい。」
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あの研修がなければ、私はこの道に進んで
いなかったかもしれません。
今も困難や迷いにぶつかる時、必ずあの光景を
思い出します。
あの日の感動が、今の私を支えてくれています。
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あの時の気づきに、そして“ご縁”に――心から
感謝。

感謝。