大切な人も
身近な人も
どれほど願っても、いつか別れの時が来ます。
頭では分かっていても、心はどうしても
受け入れきれないものです。
今日まで笑っていた人が、明日も同じように
笑っていてくれる保証は、どこにもありません。
それこそが、仏教で言うところの「諸行無常」。
形あるものは必ず変わり、永遠に続くものは
何一つないという考え方です。
私たちは、この避けられない現実を前にすると、
どうしようもなく胸が詰まります。
あの声をもっと聞いておけばよかった。
もっと優しい言葉をかけておけばよかった。
あの時の一言を謝っておけばよかった。
そんな後悔ばかりが押し寄せてきます。
けれど、不思議なことに、「変わっていくから
こそ、人は人を大切にできる」
「失われるものがあるからこそ、今の時間は
尊い」諸行無常は、その真理をそっと教えて
くれています。
もし、永遠に人が亡くならず別れも涙もない
世界だったとしたら、私たちは今日を大切に
しなかったかもしれません。
抱きしめることも
手を握ることも
「ありがとう」と声をかけることも
きっと、当たり前の空気のように流してしまって
いたはずです。
別れがあるからこそ、私たちは愛する。
失われるからこそ、今を抱きしめる。
終わりがあるからこそ、人生は美しい。
そして思うのです。
人は亡くなって「いなくなる」のではなく、
思い出の中で、その人と過ごした時間の中で、
静かに形を変えて、ずっと生き続けてくれて
いるのだと。
涙は弱さではありません。
あなたがどれほど深く誰かを愛していたかの
証そのものです。
どうか今日、大事な人の顔を思い浮かべてみて
ください。
会える人には、どうか会いに行ってください。
照れくさくても、短くてもいいから言葉にして
あげてください。
「ありがとう」
「大好きだよ」
「生きていてくれて、よかった」
諸行無常は、残酷なようでして、実は「今を
大切にしてほしい」という、優しいメッセージ
でもあります。
別れの運命を背負いながら、それでも人は人を
想うことができる。
それこそが、人生の最も美しいところでは
ないでしょうか。
どうか、今日という一日が、あなたにとって
誰かに優しくなれる日でありますように。

感謝。