お通夜やご葬儀に参列する際、香典袋や弔電・
お悔やみの手紙に書かれる文字が「薄墨」で
あることにお気づきの方も多いかと思います。
この“薄墨”には、単なる色合い以上に、日本人
ならではの深い心遣いと弔意の表現が込められて
います。
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【1. 悲しみで墨がうまく擦れなかったから】
最もよく知られている説がこちらです。
突然の訃報に接し、涙で墨が滲んでしまった/
うまく擦れなかったというもの。
→ 「深い悲しみで手が震えて…」
その心情をあらわすために、あえてしっかりと
した濃い墨ではなく、薄く滲んだ墨を使うことで、
悲しみの深さを示すのです。
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【2. 急な知らせで準備が間に合わなかった】
もう一つの説は、「急な訃報に、きちんと墨を
擦る時間もなかった」という意味合いです。
→ 墨はもともと、硯で丁寧に擦るもの。
しかし、突然の知らせに慌てて駆けつける状況
では、きちんと擦る余裕すらなかった=“薄い墨”で
急いで書いたという形で表現されます。
この場合も、**「整っていない不格好な墨の色に、
逆に誠実な悲しみがにじむ」**とされています。
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【3. 香典袋や手紙のマナーとして定着】
現代では、こうした心情的な意味が“マナー”と
して受け継がれ、香典袋や弔電・筆書きの宛名
には「薄墨で書くのが礼儀」とされています。
→ 実際、市販の香典袋も多くが薄墨印刷になって
おり、知らずに使っていても、自然とこの風習を
守っている方がほとんどです。
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【まとめ】
お悔やみの場においての「薄墨」は、
ただの色合いではなく、
• 深い悲しみの象徴
• 不意の訃報への動揺
• そして、相手を想う誠実な気持ち
を、静かに・けれど確かに伝える、日本人なら
ではの美しい作法です。
悲しみの中でこそ大切にしたい、“形に込めた
心”を、これからも丁寧に受け継いでいきたい
ものですね。

感謝。