以前、長いあいだ疎遠になっていたごきょうだい
が、岩国で静かに旅立たれました。
熊本からお姉さまが、たったひとりでお見送りに
来られました。
縁もゆかりもないこの岩国という町。
せめて帰り道くらいは、心に少しでも温かな
景色を残してあげたい——
そんな思いで、新岩国駅までお送りしました。
ちょうど桜が満開の季節。
車窓から見える錦帯橋の桜並木を指さしながら、
「綺麗だね…」と小さくつぶやかれたお姉さまの
声が、今も耳に残っています。
別れはいつも静かで、やさしい風のように過ぎて
いきます。
けれど、あの桜の景色のように、心の奥にずっと
咲き続ける記憶もあるのだと思います。

感謝。