葬儀を終えたあと、
ご遺族のもとに形として残るものは、
ほんのわずかです。
遺影写真と——お骨壷。
立派な祭壇も、豪華な花も、丁寧に畳まれた
白布も、すべてはその瞬間のためのものであり、
式が終われば、会場から姿を消します。
どんなに立派な施設で、どんなに高価な
祭壇でも、月日と共に、少しずつ記憶から
薄れていくものです。
でも、不思議なことに、そのとき掛けてもらった
一言の優しさや、親身になって寄り添ってくれた
あの人の表情だけは、ずっと心に残るものです。
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私たちは、そういう「形が残らない仕事」を
しています。
だからこそ、思います。
葬儀とは、物を販売する仕事ではないのだと。
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確かに、祭壇や花や料理にはコストがかかります。
プランや価格の比較も必要です。
でも、大切なのは「何を買ったか」ではなく、
**“どんな時間を過ごせたか”**ではない
でしょうか。
あの時間に、大切な人に何を伝えられたか。
誰と涙を流し、誰に手を握られたか。
その記憶は、遺影や骨壷のように「形」は無い
かもしれませんが、ご遺族の心の中に、ずっと
残っていくのです。
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葬儀とは、「物を売る仕事」ではなく、
**“記憶を支える仕事”**なのだと、私は思います。
そして何よりも残るのは、親切にしてもらった
記憶です。
心のこもった一言、さりげない気づかい、
それが悲しみの中のご遺族にとって、どれほど
大きな救いになるか。
一つひとつの葬儀が、ただの通過点ではなく、
これからを生きる力になるように。
そう願って、今日も私たちはお手伝いして
います。

感謝。