先日、お葬儀のお手伝いをさせていただいた
時のことです。
お別れの時間が終わり、お柩の蓋を閉じさせて
いただこうとした、その時でした。
喪主様が、それを拒まれるかのように、故人様
のおそばに歩み寄られました。
そして、もう一度お顔をご覧になり、何度も
何度もお声をかけながら、最後のお別れを
惜しまれていました。
その目からは、とめどなく涙があふれてい
ました。
その涙には、これまで共に歩んでこられた
長い年月、数えきれない思い出、感謝の
気持ち、そして、もう二度と会うことの
できない寂しさなど、私たちには到底
計り知れないほどの想いが込められて
いたのだと思います。
人は、大切な人を亡くした時、簡単に気持ちの
整理ができるものではありません。
頭ではお別れをしなければならないと分かって
いても、心がそれを受け入れてくれないことが
あります。
「もう少しだけ、このままでいさせてほしい」
言葉にはされなくても、喪主様のお姿から、
そのようなお気持ちが伝わってくるよう
でした。
私たち葬儀に携わる者は、ご遺族様の
お悲しみを、すべて理解することはでき
ません。
ましてや、そのお悲しみを同じ深さで共有する
ことなど、できないのかもしれません。
共に過ごしてこられた時間も、積み重ねて
こられた思い出も、私たちには分からない
からです。
だからこそ、私たちは、そのお気持ちを大切に
しなければならないと思っています。
無理に励ますことも、安易に慰めの言葉を
かけることも、必要ではないのかもしれ
ません。
ただ、何も言わず、そっと寄り添う。
お別れを惜しまれるその時間を、何よりも
大切にする。
そして、故人様とご遺族様に対して、全身全霊
の想いでお手伝いをさせていただく。
それが、私たち葬儀に携わる者の務めだと
思っています。
お葬儀は、決められた時間の中で進めて
いかなければなりません。
しかし、ご遺族様のお悲しみまで、時間で
区切ることはできません。
たった数分であっても、その方にとっては、
一生忘れることのできない大切な時間になる
ことがあります。
最後にお顔を見つめる時間。
最後に手を握る時間。
最後に「ありがとう」と伝える時間。
その一つひとつが、二度と戻ることのない、
かけがえのない時間なのです。
私たちは、その大切な時間をお預かりしている
ということを、決して忘れてはいけないと
思います。
どれほど心を込めてお手伝いをさせていただい
ても、大切な人を失った悲しみを消すことは
できません。
それでも、いつの日かお葬儀を振り返られた
時に、
「あの時、ちゃんとお別れができてよかった」
そう思っていただけることが、私たちにとって
何よりの願いです。
最後のお別れに、言葉はいらない時があり
ます。
ただ静かに、心を込めて寄り添うこと。
そして、悔いの残らないお別れを迎えられた
時、ご遺族様のお悲しみが少しでも和らぐ
ことを、私たちは心の中で祈っています。

感謝。